TOPPERSカンファレンス 2006 参加報告

「日本の組み込み情報」編集部
(2006/5/29)

 2006年5月26日に開催されたTOPPERSカンファレンス2006 に参加してきました。ここでは、カンファレンスの内容について報告します。

High Quality Open Sourceの実現に向けて〜TOPPERS新世代カーネルの概要〜
高田 広章(TOPPERSプロジェクト会長/名古屋大学)

まず組み込みシステム開発の現状として

 機器のデジタル化・ネットワーク化により組込み開発が大規模化・複雑化しており、 組み込みシステムの適用分野が拡大してきている。また、開発期間の短縮やコストダウンに対して強い要求がある上、新しいハードウェア技術等が登場してきている。そんななか、組み込み開発の課題として、設計品質・信頼性・安全性の確保/向上が求められているだけではなく、他にも組込みセキュリティ技術、高信頼性技術などの課題がある。安全性に関しては、電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全に関してIEC61508(JIS C 0508)という国際規格が存在するが、これは欧州発の規格であり、わが国の産業界にとって非関税障壁となるおそれがある。
 また、組込みシステム開発技術の方向性としては応用分野ごとのプラットフォーム化として、ハードウェア上にリアルタイムカーネルと必要なソフトウェア部品を載せたプラットフォームを構築・活用する方向である。TOPPERSとプラットフォームの関係は、各応用分野向けのプラットフォームを開発するのではなく、各応用分野ごとのプラットフォームを構築するために必要な部品(コンポーネント)を開発することであるとのことです。しかしながら、自動車制御システム向けに限り、実際のプラットフォーム開発まで行うそうです。

TOPPERSプロジェクトの目指す方向性として

 HiQOS(High Quality Open Source)をキャッチフレーズとして、TOPPERSプロジェクトは組み込みシステム向けの高品質なオープンソースソフトウェアを開発して、その利用環境を提供する。組み込みシステム開発における品質とは信頼性と安全性、セキュリティ等がポイントになっている。
これらに対してTOPPERSでは、以下の点について取り組みたいとのことです。

TOPPERS次世代カーネルとして
TOPPERS/ASPカーネルは?

 TOPPERS/JSPの改良版になっており、仕様としてはuITRON4.0仕様およびJSPカーネルの仕様がベースになっている。
 その他TOPPERS標準割込み処理モデルに準拠し、TOPPERS組込みコンポーネント仕様を導入している。
 しかしながら、コンポーネントを現在実装中のためにリリースはHRPより遅くなっている。
 よって、TOPPERS会員向けの早期リリースは2006年中を予定している。

TOPPERS標準割り込み処理モデルとは?

 uITRON仕様では標準化によるオーバヘッドを避けるために割り込み処理を弱い標準化にとどめているため、プロセッサ、カーネルにより違いが大きい。現在は、uITRON4.0の仕様が策定されてからすでに7年が経過しているため、プロセッサの性能が上がり若干のオーバヘッドは許される状況になってきている。そこで、TOPPERSでは割り込みに関わるソフトウェアの再利用の向上と、プロセッサの割り込みアーキテクチャの詳細を知らなくてもアプリケーションの構築が可能になるようモデル化している。

TOPPERS/HRPカーネルは?

 宇宙機などの高信頼システム向けのリアルタイムOSになっており、TOPPERS/ASPの上位互換になっている。ただし、コンポーネント仕様は導入されていない。
 uITRON4.0仕様の保護機能拡張がベースとして、メモリ保護機能やカーネルオブジェクトに対するアクセス保護機能が搭載されている。
 高信頼性システム向けの機能としてミューテックス、オーバランハンドラがサポートされている。
 2006年3月にTOPPERS会員向けの早期リリースを開始した。
 今後はJAXAが中心となって、宇宙機に搭載できる品質を確保するために検証を実施する予定である。

TOPPERS採用製品開発のためのオープンソース統合開発環境
邑中 雅樹((資)もなみソフトウェア)

 自社製品のPizzaFactory2と3の紹介でした。
PizzaFactory3ではEclipseをベースにした統合開発環境になっており、TOPPERS用のツールやビルド、ツール構成管理機能を組み込んでいる。
 EclipseはJavaで書かれているため遅いというイメージがあるが、この製品は早いということを示すため実際に会場でデモンストレーションを行った。動作はEclipse単体での起動までの速度は30〜40秒ほどだったが、製品は20〜30秒で起動していた。

TOPPERSプロジェクトにおけるマルチプロセッサへの取り組み
本田 晋也(名古屋大学)

 TOPPERS/FDMPとTOPPERS/SMPについての講演でした。
 組み込みシステムにおけるマルチプロセッサは、高い性能が必要な一部のシステムでは従来から存在していたが、規模や消費電力の関係で、一般の組込システムには用いられることはなかった。しかし、近年のオンチップマルチプロセッサの出現により一般の組み込みシステムでも利用が広がってきている。
 TOPPERSプロジェクトでは、蜜結合マルチプロセッサは通信のレイテンシが小さいため、以下をリアルタイムOSでサポートする。
 疎結合マルチプロセッサは通信のレイテンシが大きいため、コンポーネント仕様の枠組みで扱う。

TOPPERS/FDMPは?

 機能分散マルチプロセッサ用のリアルタイムOSで、プロセッサごとに機能を固定するモデルである。
 組み込みシステムは機能が固定されている場合が多いため、このモデルが用いられることが多い。
 TOPPERS/FDMPはuITRON4.0仕様を機能分散マルチプロセッサに拡張しており、マルチプロセッサ独自の機能は極力設けないように実装している。
 uITRON仕様のAPIでプロセッサ間の同期・通信が可能であり、uITRON仕様OS向けのソフトウェア資産が活用可能である。

TOPPERS/SMPは?

 対称型マルチプロセッサ用のリアルタイムOSで、全てのプロセッサを同一に見なし機能を固定しないモデルである。
 負荷分散を目的としており、汎用システムで一般的である。
 TOPPERS/SMPはuITRON4.0仕様を対称型マルチプロセッサ向けに拡張しており、マルチプロセッサ独自の機能は極力設けないように実装している。
 uITRON仕様のAPIでプロセッサ間の同期・通信が可能であり、uITRON仕様OS向けのソフトウェア資産が活用可能である。

ロボット教材・雑誌付録基板へのTOPPERS実装・組込ハード&ソフト研究会・土日システム開発部・キャリア教育
江崎 雅康((株)イーエスピー企画)

 ロボットを教材として子供達にプログラムの講習会を開いている。
 実際に小学生くらいでも一日教えるとラインに沿って動くロボットがプログラミングできるようにもなるらしいです。コツとしては最初の段階ではテンプレートを用意して動作をさせ、最後はどう動作するか書かれた関数の一覧を渡してテーマを言えば、ロボットが動作をするプログラムを書けるらしいです。なぜロボットを教材に採用したかと言えば、ロボットは組み込み技術の集大成であるからだそうです。実際にロボットの制御はほとんどがリアルタイム処理(サーボや、センサ等)になっているうえに、小型化、軽量化のためハードウェアに搭載できるものが限定されていたりするので、ロボットを使用して組込みシステムを勉強するのが効果的のようです。

組込みソフトウェア教育におけるTOPPERSの使い方〜オンリーワンを目指す教育〜
山本 雅基(名古屋大学)

 TOPPERSプロジェクトの教育WGでは教材開発をおこなっており、初級実装セミナー教材、中級実装セミナー教材、TOPPERS版鹿威しを開発した。また初級教材は多言語化をはかり中文と英語に翻訳されている。
 TOPPERS教材の長所としては、
短所として、
ということがあげられていた。
 また提案としてオンリーワンを目指す教育へTOPPERSを利用する。
 まずオンリーワンを目指すためには、基礎ができていることが大切で、TOPPERS教材は基礎としての必要条件は満たしているものとして、TOPPERS教材をベースにして初級・中級教材自体を改善して新教材を開発していき、オンリーワン人材を育成していく。

町工場発・小型人工衛星におけるTOPPERSの活用と人材の相互育成
古山 寛一(東大阪宇宙開発協同組合SOHLA技術開発グループ)

 現在のロケット開発は開発期間が3〜7年、コストが50〜300億ほどかかっており、この原因としては一品生産であることが原因の一つだそうです。対してSOHLAの目標としては開発期間は短期開発で1年半、コストは1億を目標にしているそうです。
 小型人工衛星の形はパネル型になっておりそれぞれが違う機能をもっており、必要な機能のパネルを組み合わせることで様々な作業ができるようになっている。パネル型にしてそれぞれのパネルに機能を持たせることにより、衛星一つを作るよりコストが安くなっており、また再利用性があがっている。パネルに搭載されパネル同士と連絡を取り合っているCPUはH8S2556がベースでRAMなど拡張したうえで、TOPPERS/JSPを搭載して動作実験しているそうです。

以上簡単ですが、TOPPERSカンファレンス 2006の参加報告でした。



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